2013年10月07日

リチャード・S・ワーマン

雑誌『考える人』秋号の「人を動かすスピーチ」という特集に、リチャード・S・ワーマンのインタビューが載っていた。『それは情報ではない。』などの著書で僕らの業界では有名な人。それがなぜこの特集に取り上げられているかというと、この人は、「広める価値のあるアイデアのプレゼンテーション」を各方面の有名無名の人々に行わせるTEDというグループの創始者でもあるから。

TEDの映像は、TEDのサイトやYouTubeで多数公開されているので、ご覧になったことのある方もいるだろう。NHKでも「スーパープレゼンテーション」という題名で放映されている。

たとえばこれ。プレゼンテーションの力を実感できるはず。

ダニエル・ピンク 「やる気に関する驚きの科学」
http://www.ted.com/talks/lang/ja/dan_pink_on_motivation.html

ワーマン自身は、現在はTEDから離れている。TEDについて問われて彼はこんな風に言っている。

「私の出発点は無知だ。私は、苔の生えていない苔庭なのだ。八十三冊におよぶ著作はすべて、自分自身がわからないことを理解するプロセス、つまり、無知から既知へと旅する足跡なのだ。」
「新しいことを学び、聡明な人々と対話を重ねることで、好奇心が満たされ、私の毎日は興味深いものとなる。これで、TEDの歴史はすべて語った。」

彼にとっては、TEDもひとつの通過点に過ぎなかったのだろう。
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2012年01月18日

テクニカルコミュニケーション学術研究会

テクニカルコミュニケーション分野のメーリングリストを十数年前から運営しているのだが、そこの有志でかつて勉強会を開催していたことがある。1999年、2000年の頃の話で、月に一回集まって、持ち回りで何か発表するという内容。メンバーは、フリーランス、制作会社、ソフトメーカー、ハードメーカーなど幅広く、楽しくも充実した集まりだった。

そのメンバーの一人だった方から、学術研究会のシンポジウムの案内をいただいた。2012年3月3日(土)の午後、場所は早稲田大学。ご興味ある方は、ぜひご参加を。

第1回テクニカルコミュニケーション学術研究会
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2011年06月22日

スクリーンキャプチャツール「PicPick」

多くのテクニカルライターにとってスクリーンキャプチャツールは仕事に欠かせないものだろう。少なくとも僕はそれなしではやっていけない。僕の場合、Windows用としてはWinShotというフリーウェアをずっと使ってきた。こいつはシンプルで使いやすく、しかも僕が必要とする機能はほぼすべて備えている。キー操作一発で画面をファイルに保存でき、角の丸いウィンドウで隅の部分の色を自動的に白くすることも、マウスカーソルを含める・含めないことも、指定時間後に自動的にキャプチャすることもできる。ただ残念なことに、このソフトはだいぶ前にバージョンアップが止まっており、Windows7やVistaには正式には対応していない。一応、問題なく使えてはいるが、まれに動作が不安定になることがある。


そんなわけで、正式にWindows7に対応していて、WinShotと同等程度には使いやすいものはないかと常々思ったいた。しかし、自分の求めるようなソフトは案外ないもので、他のソフトを試してはWinShotに戻ってくるということを繰り返してきた(高いレベルを求めているわけじゃないと思うのだが)。が、ここ数日、使っているPicPickは、もしかしたらWinShotの後継としてこれから使い続けていくことになるソフトかもしれないと感じている。Windows7に正式に対応していて安定感があり、WinShot同様に使いやすく、WinShotよりも高機能。イメージエディター(画像編集機能)が内蔵されており、トリミングやモザイク処理など、スクリーンショットでよくある加工もすぐできる。

そうそう、デュアルモニターにも対応しているのが個人的にはありがたかった。WinShotでは、デュアルモニターのサブモニターでキャプチャすることができず(少なくともうちの環境では)、不便に感じていたからだ。

ビジネスユースには$21.99(約2000円)かかるが、プライベートユースであれば無料。まずは使ってみて、「これはイケル」とわかったら購入するとよいだろう。テクニカルライターの皆さん、ぜひお試しを。
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2011年06月13日

ケータイとiPadのバッテリー

2008年発売のWILLCOM03をいまも愛用している。PC上のOutlookのアドレス帳(連絡先)、カレンダー(予定表)、メモと同期でき、Windows Media Playerの楽曲データも共用できるので、自分にはこれで「間に合っている」という感じなのだ。だが、さすがにバッテリーの持ちが悪くなってきたので、先日、バッテリーをネット(えこじじいの店)で購入した。純正品はもう販売されていないようなので、サードパーティ製のHLI-BL16SLというものにした。

交換前は、バッテリーは1日しか持たなくなっていた。以前は3日くらい持っていたんじゃないかな。今回交換してみた結果は素晴らしいものである。フル充電してから2日は経っているはずだが、まだフル充電のままだ。こうであってほしいよな、ケータイは。

ところで、3月に購入したばかりのiPadが、最近バッテリーの減りが早くなっているような気がする。最初は3日くらい持ったはずだが、いまは2日くらいか。使いつづければ1日も持たないかもしれない(そこまで使い続けることはしていないが)。iPadのバッテリーって交換できるのだろうか?と思って調べてみると、アップルでやってくれるそうだ。

「1年間保証では、バッテリー不良時の交換を保証範囲としています。AppleCare Protection Plan for iPadを購入した場合は、保証期間を2年間まで延ばすことができます。保証期間中に、バッテリー容量が当初の50%以下にまで落ちていたら、Appleはバッテリーを無償交換します。保証期間を過ぎた場合は、11,800 円 (税込) で新しいバッテリーに交換することができます」とのこと。

バッテリーの交換
http://www.apple.com/jp/batteries/replacements.html


しかし、バッテリー交換の前に、バッテリーの持ちをよくするいくつかのことを試してみる価値はありそうだ。アップルは「少し配慮をするだけで、バッテリー駆動時間と、iPadのバッテリー耐用年数を最大限に引き伸ばすことができます」と言っている。その方法は、高温を避けること、メール受診や位置情報など通信関係の設定を変更して必要最小限の頻度にすることなど。やってみようっと。

iPad
http://www.apple.com/jp/batteries/ipad.html
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2011年06月12日

カラオケ端末のユーザビリティ

先日、カラオケ店に行ったのだが、そこにあった端末やシステムの使いにくさに驚かされた。ポイントは2つ。

(1)邦楽と洋楽が別々
クラプトンの「レイラ」を歌おうと思って、選曲ボタンを押し、「LAYLA」と入力して検索を実行したのだが、日本の楽曲ばかりが出てくる。よく調べてみると、選曲ボタンを押したあとに、洋楽ボタンを押す必要があったのだった。なぜ両方を横断しての検索ができないのだろうか。ユーザーは当然それを期待するのではないだろうか。

(2)杓子定規な前方一致検索
ビートルズの曲を探そうと思い、歌手名選択ボタンを押して、「BEATL」と入力したが(入力欄は5文字までしか入らない)、何も出てこない。ビートルズがない??? そんなはずはないと考え、試行錯誤してわかったこと。「THE」を付けなければならないのだった。つまり「THEBE」(繰り返すが、5文字までしか入らない)と入力すれば、ビートルズが検索できるのだ。ビートルズを検索するときに最初から「THE」を付ける日本人がどれくらいいるだろうか。少数派だろう。

ちなみにローリングストーンズも同様で、「ROLLI」では何もヒットせず、「THERO」でやっとヒットする。


たぶんあれは古いシステムなのだろうと思う(端末も年季が入っている感じだった)。最新のはどうなのか、機会があったらチェックしてみたい。
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2011年04月27日

プリンター導入時の小さな落とし穴

郷里の父から電話。新しく購入したプリンターでプリントできないとのこと。OSはWindowsXP。

電話で手順を伝えながら、まずプリンターのプロパティを開き、テストページのプリントを試みる。これは成功。プリンターに問題はないし、PCとの接続も大丈夫ということだ。

では、アプリ側の操作の問題かと、アプリからのプリント手順を一つずつ進めて確かめる。結果、プリントのダイアログボックスで、以前使っていたプリンター(もう接続されていない)が選択されていることが判明。標準で使用するプリンターが古いプリンターのままになっているのだ。旧プリンターのドライバーを削除し、トラブルシュート終了。

プリンタードライバーをインストールした場合でも、デフォルトのプリンターは変わらないんだっけ。だとしたら、落とし穴だなあ。
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2011年01月24日

iPad

とうとうiPadを買ってしまった。見る前に跳ぶという感じで。

紙のマニュアルはナシ。かろうじてマニュアルらしきものは、各部名称の書かれた厚紙1枚。なんという潔さ。ただし、ネット経由で閲覧できる『iPadユーザーズガイド』というオンラインマニュアルはある。そっちはまあ普通のマニュアル。

とりあえず意味もなく写真を表示したりサファリでネットサーフィンしたりしているのだが、この「操作すること自体が楽しい」という感じは久しぶりだ。
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2010年12月19日

マニュアルはiPad



ヒュンダイモーターアメリカの発売したエクウスという車は、オーナーズマニュアルがiPadなのだそうだ。マルチメディア化されたマニュアルを収録したiPadが車に付属しているのだという。上の映像で、そのマニュアルを使用しているところが少し見られるが、なかなか楽しそうだ。最初から最後まで画像・映像中心の作りになっているのか、テキストのみの部分もそれなりにあるのか、UIはどのようになっているのかなど、実物を見てみたいものだと思う。いずれにしろマニュアルとして画期的試みであることは間違いない。


取説をiPad化して装備…ヒュンダイ エクウス 新型
http://response.jp/article/2010/12/18/149507.html


と、思ったら、このマニュアルは電子書籍アプリとして無料で公開されているというではないか。(iPad、持ってないけど)

韓国・現代自動車が米国向け高級車「Equus」のマニュアルをiPad電子書籍アプリとして無料公開、販促にも活用
http://hon.jp/news/modules/rsnavi/showarticle.php?id=1989&

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2010年12月05日

機能している情報は見えなくなる

情報デザインに関して、原研哉氏いわく「本当に機能している情報は機能している時には見えなくなる。そうしないと情報がノイズになってコミュニケーションの品質をそぐ」。そしてブックデザイナーの鈴木一誌氏はこういう。「「紙は実在しない」、こう感じるときがよくある。たとえば、行文を追いながら意味を受けとっているとき、紙を目にしているとの自覚はない」。(いずれも岩波書店『図書』12月号より)

前者は情報のデザインの話でもう後者は情報を媒介するメディアの話ということになるだろう。情報のデザインにはメディアの形態も含まれるだろうから、前者は後者を包含した話と解釈できそうだ。
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2010年11月29日

マジック

十分に発達した科学は魔法と区別がつかない――そう言ったのは、アーサー・C・クラークだっけか。iPhoneなんか、まさにそうだよな。魔法の板といったところだ。人は魔法を使える。

それは科学に限らない。僕が書いたテキスト原稿がデザイナーの手を経て美しくレイアウトされて上がってきた。これもまた魔法のようだ。デザイナーに対して、敬意を覚えずにはいられない。

女性が化粧や装いで別人のようになる。これもまた魔法のようではないか。

そのようにして変身した女性が、その魅力で男性に魔法を掛ける。スティングは、every little thing she does is magicと歌った。魔法にかけられた男の言葉だろう。人は魔法を使える。
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2010年11月19日

気になる表現

 「対処療法」などと書くのは漢字の意味を理解しないで使っているということだよなあ。正しくは「対症療法」(病根そのものを対象としない、個別の症状に対応した治療法)。
 ネットでよく見かける「○○についてご教授ください」も、まあ誤用だろうなあ。誰かに弟子入りしてガッツリ学ぶというのであれば間違いではないだろうけれど、単に「ちょっと教えて」ということならば「教示」だ。
 「対処療法をご教授ください」なんて言わないよう、よい子のみんなは気をつけよう!
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2010年08月30日

読まなくてもわかる操作しかしない 87%

 28日の朝日新聞夕刊に「ケータイ説明書 ダイエット」と題した記事が掲載されていた。携帯電話をはじめとする多機能製品のマニュアルが、かつてのページ増加傾向から一転し、薄くなってきているという話だ。このことはテクニカルライターの多くが以前から感じていたことだと思うが、記事にはさらに興味深いことが出ている。
 ケータイのマニュアルのページ減を敢行したNTTドコモでは、コールセンターへの問い合わせ増加を覚悟していたが「実際には減っている」というのだ。その理由として「『わかりやすく』と詳しくなりがちだったが、『読みたくなる』作りに変えた。手に取りやすくなって、読んで解決してもらえる割合が増えたのでは」とNTTドコモではみている。手に取ってももらえない500ページのマニュアルよりは、基本的なことしか載っていなくても手に取ってもらえる100ページのマニュアルのほうがユーザーには役立つ、ということだろう。
 ユーザーの側も変化してきていることが示唆されている。東京ガス都市生活研究所の調査では、「モノを使用するにあたって説明書をよく読むようにしている」人が1996年は83%だったのが、2008年には56%になっているというのだ。ユーザーは、マニュアルを読まなくなってきている。元々そうだったとは思うが、それがさらに進行しているわけだ(実態は56%よりもっと低いような気がするのだが)。
 マニュアルを読まないで、ユーザーはどうやっているのか。日本消費者協会の調査が、明確な答えを示している。「読まなくてもわかる操作しかしない 87%」ということなのだ。ユーザーは、マニュアルを読まず、読まなくてもわかる操作しかしないのだ。
 最後に記事は、ITジャーナリスト神尾寿氏の意見として「今後は使いながら操作を覚えるような製品が主流になり、説明書はなくなる方向にあるだろう」という見方を紹介している。
 はたしてマニュアルは、絶命危惧種への道を歩んでいるのだろうか。
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2010年03月11日

イエズス会のTC的苦労を偲ぶ

加藤周一の『日本文学史序説』によると、近世の日本においてキリスト教の布教にあたったイエズス会は、当初、主な宗教用語に日本語訳を用いる方針だった。たとえば神は「大日」、「天帝」、「天道」、「天主」。悪魔は「天狗」、キリストの愛は「御大切」(ごたいせつ)とした。しかし、のちにはポルトガル語やラテン語をそのまま外来語として用いる方針に切り替えたという。

「宣教師の側に、日本語概念の転用が教義内容の誤解を生み易いという考えが、強かったからであろう」と加藤は推測したうえで、次のように整理している。「けだし外来語の採用は、原語の意味の歪曲を避けるのにいくらか役立ったであろうが、思想の普及には障害になったろうと想像される。逆に明治に採用された徹底した翻訳主義は、あきらかに西洋思想の普及を助けたにちがいないが、しばしば訳語の意味が原語のそれから遠ざかるのを防ぐことができなかった。」(『日本文学史序説 上』p.412、ちくま学芸文庫)

分野は違うものの、現在においてTCに関わる者は近世のイエズス会と同じような苦労をしているといってよいのではないか。ユーザーエクスペリエンス、アフォーダンス、アベイラビリティ、クラウドコンピューティング……。そのまま外来語でいくのか、日本語訳を用意するのか。

まあ、いまは、方針を改めたイエズス会と同様、外来語でいくのが一般的かもしれない。強引な日本語訳では「誤解を生み易い」ということもあるだろうし、原語の意味に相当する言葉自体が日本語にないとか、次々に登場する新用語に翻訳では対処しきれないという事情もあるかもしれない。

かつてのイエズス会の苦労と我々の苦労の類似を考えるとき、ITの世界でもエバンジェリスト(伝道者)という役職があるのが妙に面白く感じられる。

※「イエズス会」を「イエスズ会」と書いてしまっていたので、修正しました。
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2010年03月03日

トコトコ公太郎

福井県立図書館の「覚え違いタイトル集」が面白いという情報がツイッターで流れてきた。図書館のカウンターで聞いた、書名や著者名の覚え違いを記録したものだ。

たとえば「トコトコ公太郎」という本を探しに来た人が実際に求めていたのは『とっとこハム太郎』だったとか。おそらく縦書きで書かれたメモを、そのように誤読したのだろう。「とっとこハム太郎」を縦に書けば、「トコトコ公太郎」と読めなくもない。

『ネズミ父さん大ピンチ』を「ねこのとうさん大ピンチ 」といった人の例もある。これは覚え間違いだろう。ある意味でネズミの対極であるネコが、ネズミの代わりに先頭に収まってしまったというのが興味深い。

誤読や覚え違い、人間はそのようなミスをする生き物だということを再確認した。
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2010年02月05日

PAGE2010

JAGAT(社団法人日本印刷技術協会)主催の展示会PAGE2010に行ってきた(一度行ってみたかったんだ)。美しいコンパニオンたちを用意して目立っていたのは大手の出力機メーカーやフォント会社であるが、そういうのには目もくれず、マニュアル制作に役立ちそうなXML関連製品を中心に見てきたしだい。

気になったのはこんな製品。

Word2XML(WordファイルのXML変換)
http://www.sgml-xml.jp/tools/word2xml_manu.html

OpenPublisherPro(複数のWordファイルをXML経由でInDesignにて自動組版)
http://www.openend.co.jp/

AH Formatter V5(XMLやHTMLを紙媒体向けのレイアウトにフォーマットしてPDFやポストスクリプトなどに出力)
http://www.antenna.co.jp/AHF/

NEXTDarwin(DITAトピックの作成、マッピング、PDF/HTML/オンラインヘルプ出力までをブラウザ上で行う)
http://www.nextsolution.co.jp/products/nextdarwin/index.html

マニュアル制作も新次元に入ってきた、という印象を受けた。
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2010年01月28日

テクニカルコミュニケーションにおける「稀少」と「潤沢」

著書『ロングテール』においてクリス・アンダーソンが、旧来の紙の出版とオンライン出版との違いを「稀少」と「潤沢」という言葉で対比させているということを、季刊誌「考える人」の松家編集長がメルマガで紹介している。孫引きになるが、一部を引用してみる。
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 雑誌編集者として稀少と潤沢の両方の世界に住んでいる私は、毎日その緊張に直面している。印刷版のほうは、稀少なもののルールで運営している。ページ数は限られていて、一ページは高価だ。(中略)
 一方、オンライン版は無限にページ数があり、いくらでも変更できる。こちらは潤沢な経済であり、まったく異なるマネジメントが求められる。
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さて、この「稀少」と「潤沢」の形容は、テクニカルコミュニケーション――具体的にはマニュアル類にも当てはまるだろうか。雑誌とマニュアルとではビジネスの仕組みが異なるものの、紙とオンラインの両方が存在しており、オンラインへの移行が進みつつあるという点では、同じといってよさそうだ。

紙のマニュアルでは、ページは「稀少」なものだ。ページが増えれば、制作費も印刷費も増えるし、ユーザーにも敬遠される。オンラインマニュアルならば、そのような制約は少なく(ゼロではないものの)、ページというか掲載スペースは「潤沢」である。

ユーザーは、どちらを向いているだろうか。ユーザー層にもよるはずだが、ネット利用者の場合はオンラインのほうを好むだろう。メーカーによるオンライン化の取り組みとしては、紙のマニュアルのために制作したコンテンツをそのままPDFにしてウェブに載せるという形が多いようだ。しかし、これではオンラインの「潤沢」さを十分には活かしきれていない。実際、PDFマニュアルから情報を探すよりは、Googleなどで検索をかけ、あるいはOKWaveやYahoo!知恵袋などで質問し、情報を得ようとするネットユーザーが多いのではないだろうか。「稀少」と「潤沢」という視点は、マニュアルの未来を考えるうえでのヒントになるかもしれない。
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2010年01月15日

テクニカルライターは良い仕事?

mixiのTCストリートカフェにも書いたのだが、北米における「最高の仕事」ランキングの13位にテクニカルライターがランクインしているそうだ。求人情報サイト「キャリアキャスト・コム」が発表したランキングで、「仕事上のストレスや労働環境、肉体的負担、収入、将来性などを基準」として評価した結果だとか。


ベスト20は以下のとおり。

1.アクチュアリー
2.ソフトウェアエンジニア
3.コンピューターシステム・アナリスト
4.生物学者
5.歴史学者
6.数学者
7.パラリーガル
8.統計学者
9.会計士
10.歯科衛生士
11.哲学者
12.気象学者
13.テクニカルライター
14.銀行員
15.ウェブ開発者
16.生産技術者
17.ファイナンシャル・プランナー
18.航空宇宙エンジニア
19.薬剤師
20.診療情報管理士


1位のアクチュアリーとは「ビジネスにおける将来のリスクや不確実性の分析、評価等を専門とする専門職」(Wikipedia)とのこと。そんな職業があるなんて知らなかった!

それはさておき、テクニカルライターが13位という結果、当のテクニカルライターの皆さんはどうお感じになるだろうか。求人情報サイトの調査なので、会社勤めのテクニカルライターを指しているのだろう。当事者にはいろいろ苦労や不満もあるものだとは思うが、客観的にはなかなか悪くない仕事だということはいえるのかもしれない。いずれにしろ、このように私たちの仕事の名前がメディアで報じられるのは、業界にとって良いことだろう。

2010年の「最高の仕事」はアクチュアリー(ロイター)
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-13218320100106?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0&sp=true
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2009年10月27日

宅配ボックスに消えた荷物を追って

その女は疲れた表情で事務所に現れた。浮気調査は請け負っていないと私があてずっぽうで言うのを無視して彼女はこう切り出した。
「荷物を探してくださらないかしら」
「荷物というと?」
「中身については言いたくないわ。ネットで注文したものよ。マンションの宅配ボックスの2番に入れたという伝票が郵便受けにあったの」
「じゃあ宅配ボックスカードを差し込んで品物を受け取れば済む話だ」
「カードを入れても“荷物は届いていません”と表示されてしまうのよ。荷物はどこに行ってしまったのか…。力を貸していただけないかしら?」
「よろしい、引き受けよう。1日あたり100ドルと必要経費をいただく」
「ここに100ドルと、宅配ボックスカードがあるわ」

私はまず伝票に書かれた連絡先に電話をかけてみた。荷物を配達したドライバーは、間違いなく2番のボックスに入れたと断言した。彼は嘘はついていないようだ。

次にわたしは、問題の宅配ボックスのところに行った。カードを差し込むと、確かに“荷物は届いていません”と表示される。そこで、配達者が行う、荷物を入れる操作をおこない、2番のボックスを開けてみた。そこにはアマゾンのラベルの貼られた荷物があった。

中身は本かCDかDVDだろうか。私の知ったことではない。荷物を受け取った女は、2つのグラスにウイスキーを注ぎながら言った。
「このあと、お時間はあるかしら」
「荷物は見つかったが、まだわかっていないことがある」
「どうしても中身を言わせたいのね。シン・リジーのライブのDVDなの…」
「そのことじゃない。なぜ荷物が入っているのに宅配ボックスが動作しなかったのか。これを解決しなければ、また悲劇が繰り返される」

私は宅配ボックスのサービス窓口に電話をかけた。相手は若い女だった。事情を説明すると、女は慇懃に、しかし冷凍マグロのような態度で言った。「その荷物は高さが2cm以上でしょうか?」――今回の荷物は薄く、寝かして置くと高さは2cmもない。

宅配ボックスは、高さが2cm以下の荷物は認識しない仕様なのであった。私は宅配ボックスの前にとって返し、前面に貼られている大きな注意ラベルを確認した。赤地に白抜き文字で「厚さ2cm以下のもの(チラシ、封書、透明なもの等)は、入れないでください。お届け操作になりません。」と明示してある。

宅配ボックスの注意ラベル
悲劇の原因は、注意ラベルをちゃんと読まなかった宅配業者のドライバーの不注意にある。しかし、私自身、宅配ボックスの前に立ちながらその注意ラベルに気づかなかった。いや、何か文字が書いてあることはわかっていたが、読もうとはしなかった。私はドライバーを責める気にはなれなかった。宅配業者に電話をかけ、2cm以下の荷物は持ち帰って再配達したほうがよいと忠告をした。

疲れきって家に戻ると、依頼者の女が待っていた。「あなたにはよくしていただいわ。お金ではないお礼をしたいの」そういって彼女は部屋の灯りを消した――

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※宅配ボックスに関する記述以外はフィクション(妄想)です。
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2009年10月20日

警告ラベル最適化ゲーム

091019-150734.jpg某所のトイレで見つけた警告ラベル。

ご使用方法を誤るとお子さまがケガをしたり、火災の原因になることがあります。

とあった。「したり」を使うなら、2回だろうなあ。

ご使用方法を誤るとお子さまがケガをしたり、火災の原因になったりすることがあります。

しかしこれではなんだかくどい。では

ご使用方法を誤るとお子さまのケガや火災の原因になることがあります。

でどうか。さらに読点を入れて

ご使用方法を誤ると、お子さまのケガや火災の原因になることがあります。

としたほうがわかりやすいかな。「ご使用方法」が堅いから

使いかたを誤ると、お子さまのケガや火災の原因になることがあります。

としたほうが親しみやすいか。しかし言わずもがなのことだし、この一文は削除でいいかもしれんなあ。
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2009年08月14日

海老沢泰久氏の訃報に思う

直木賞作家の海老沢泰久氏が13日に亡くなった。59歳という若さ。作家としてはまだこれからという年齢だろう。

氏は作家でありながら、テクニカルコミュニケーションの世界にも足跡を残している。1997年に『これならわかる パソコンが動く』(NECクリエイティブ)というパソコンの解説書を出しているのだ。これは当時多かった、マニュアルや解説書は横文字ばかりでわかりにくいなどの批判に応えるものとして企画された本で、マニアではない一般の人向けの文章に長けた書き手として海老沢氏が起用された。体裁も縦書きとし、できるだけ専門用語を使わずに書かれたこの本は、当時としては画期的なものだった。いまでこそ、そのようなコンセプトの解説書はさほど珍しくはないが、原点に海老沢氏の著書があったことをこの業界にいる者として記憶しておきたいと思う。
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