2010年10月24日

『進化の存在証明』リチャード・ドーキンス著、垂水雄二訳、早川書房

 進化論は「論」と付くということから、一つの理論、仮説にすぎないのだ、という意見がある(僕自身、知人がそう話すのを聞いたことがある)。本書は、そのような意見に対する反論であり、進化が疑う余地のない事実であることを数々の証拠でもって証明する本である。
 なぜドーキンスが600ページに及ぶ大著でわざわざそのような証明を行わなければならなかったのか。少なくとも日本では、ドーキンスが奮闘するまでもなく、多くの人が進化論を信じている。しかし、米国では事情が大きく異なる。本書の付録で紹介されているのだが、2008年のギャラップの調査によると、こうだ。
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 人類の起源と発達について、以下の発言のうち、どれがあなたの考え方にもっとも近いでしょうか?
1 人類は何百万年のあいだに原始的な生物から発展してきた。しかし、この過程は神によって導かれた(36%)。
2 人類は何百万年のあいだに原始的な生物から発展してきた。しかし、この過程に神はかかわらなかった(14%)。
3 神は人類を、現在と非常によく似た姿で、ここ1万年ばかりのうちに一遍で創造した(44%)
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 カッコ内の数字は、それを選んだ人のパーセンテージ。1808年ではなく2008年の調査である。1はまだしも3のように考える人が44%というのは衝撃的結果で、ドーキンスがこの本を著そうとした動機がわかるというものではないか。英国でも、米国ほどではないにしろ、似たような状況であるらしい。これは書かねばならなかった本なのである。
 中身は、難しい事柄をわかりやすい比喩で流麗に語る、いつものドーキンスの筆致。
posted by kunio at 19:14| Comment(3) | TrackBack(1) | 本・文学
この記事へのコメント
 ドーキンス、あまりの厚さに読んだことなかったのですけれど(「進化」という語り口にもやや忌避感を覚えつつ)、彼の「進化」論は、神学論争の文脈での「進化」なのですね。<生物学的根拠>あるいは<近代科学的根拠>を代補したかたちでの「進化」、という言葉だったのですね。ちょっと勘違いしておりました。ありがとうございます。
 
Posted by オオノ at 2010年10月25日 21:44
うーん、たぶん近代科学的根拠の話です。
ドーキンスの本はどれも面白いので、一つ読んでみてはいかがでしょうか。とくに『利己的な遺伝子』や『延長された表現型』など初期の本は、感動的ですよ。
Posted by kunio at 2010年10月25日 22:32
オススメありがとうございます。時期的に、正月三箇日の読書にしようかなあ(笑)と思っています。bookレビューを探してみたのですが『延長された表現型』、おもしろそうですね。『盲目の時計職人』っていうのも、ちょっと気になります。今度、探してみますね。
Posted by オオノ at 2010年10月26日 13:14
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