進化論は「論」と付くということから、一つの理論、仮説にすぎないのだ、という意見がある(僕自身、知人がそう話すのを聞いたことがある)。本書は、そのような意見に対する反論であり、進化が疑う余地のない事実であることを数々の証拠でもって証明する本である。
なぜドーキンスが600ページに及ぶ大著でわざわざそのような証明を行わなければならなかったのか。少なくとも日本では、ドーキンスが奮闘するまでもなく、多くの人が進化論を信じている。しかし、米国では事情が大きく異なる。本書の付録で紹介されているのだが、2008年のギャラップの調査によると、こうだ。
---
人類の起源と発達について、以下の発言のうち、どれがあなたの考え方にもっとも近いでしょうか?
1 人類は何百万年のあいだに原始的な生物から発展してきた。しかし、この過程は神によって導かれた(36%)。
2 人類は何百万年のあいだに原始的な生物から発展してきた。しかし、この過程に神はかかわらなかった(14%)。
3 神は人類を、現在と非常によく似た姿で、ここ1万年ばかりのうちに一遍で創造した(44%)
---
カッコ内の数字は、それを選んだ人のパーセンテージ。1808年ではなく2008年の調査である。1はまだしも3のように考える人が44%というのは衝撃的結果で、ドーキンスがこの本を著そうとした動機がわかるというものではないか。英国でも、米国ほどではないにしろ、似たような状況であるらしい。これは書かねばならなかった本なのである。
中身は、難しい事柄をわかりやすい比喩で流麗に語る、いつものドーキンスの筆致。
2010年10月24日
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/41471670
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
賭博と国家と男と女 〜人は利己的に協調する
Excerpt: 人間に数の能力を進化させたものは何だろう。なぜ人間は数を厳密に数える必要に迫られたのか。私は以前、 人間が人間になる過程で大変重要だった現象として"浮気"を考えた。人間は夫が妻と子を残して狩りに出 か..
Weblog: 投資一族のブログ
Tracked: 2011-02-03 21:11
http://blog.sakura.ne.jp/tb/41471670
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
賭博と国家と男と女 〜人は利己的に協調する
Excerpt: 人間に数の能力を進化させたものは何だろう。なぜ人間は数を厳密に数える必要に迫られたのか。私は以前、 人間が人間になる過程で大変重要だった現象として"浮気"を考えた。人間は夫が妻と子を残して狩りに出 か..
Weblog: 投資一族のブログ
Tracked: 2011-02-03 21:11
ドーキンスの本はどれも面白いので、一つ読んでみてはいかがでしょうか。とくに『利己的な遺伝子』や『延長された表現型』など初期の本は、感動的ですよ。